お知らせ

長らく放置してしまいましたが、ひとまず告知だけ。 □ 2011/11/3の文学フリマ、私は参加できませんが、当日出る雑誌に掌編を寄稿させていただきました。 B-01 書肆べうから発行される、「文藝不一」第三号に載ります。 小説特集はテーマ「怪獣」。 そして「…

蓬莱島

八鶴楼が陥落したという。 李芝浜も耳を疑った。あれは城市心臓部に建つ摩天楼、確か階層は二百を超えていた。落ちた、とは、ほんの数階沈んだだけなのか。あるいは丸ごと地底に持っていかれたのか。 海辺の低い望楼からでは、さすがに様子は伺えない。遥か…

無題(シイとアリス)

散々だった。 突然の大雨は、うんざりする間もくれずシイをずぶ濡れにし、下着も靴も等しく不快に貼りついて体温を奪った。顔を伝う水滴は鬱陶しく、銃把を握りしめた手はもう感覚がない。 そりゃ雨だからって、索敵の精度は多分変わらないけどな。 口の中で…

被害、地図屋事務所

「……だ!」 だ? と同僚の妙な声に首を傾げ、ファムは車を降りる。先に事務所へ向かったクオリーが、入口で固まっていた。 事務所、といえば聞こえはいいが、要は地図屋のための飯場だった。事務員が常駐しているわけでもない。雨露をしのげればいい簡素な小…

散華会(さんげえ)、猫眉河

波間には色鮮やかな花紙が無数に浮かぶ。流し燈籠の炎が点々と揺れる。蓮の花を模した紙片が絶え間なく降り注ぐ。中には紙銭も混じる。火の着いた爆竹も。橋の上から、岸の巨大な集合住宅から、人々が歓声を上げながら、放つ。 護岸ブロックに身を寄せるよう…

冬の文フリ8P本に使おうと思ったボツ長編断片

そして朝になり、自分がどこに来たのかを知った。 簡素な二階建ての宿舎のすぐ裏、というよりすぐ上には、一株のプラーンコーンが天高く育っていた。高さ約二〇〇メートル、茎の根本の直径は一五メートルほどになっているだろうか。はるか上空で、重たげな穂…